2014年12月23日火曜日

自然と暦と生活








沖縄の八重山諸島、西表島の道の終わり、南の果てに南風田(ハイミダ)というビーチがある。今ではどうだか知らないけれど、15年くらい前、そのビーチには何ヶ月、中には何年もキャンプしながら住んでる人達がいた。



僕もその浜に一月ぐらいテントを張って暮らしていたことがある。

目の前にはエメラルドグリーンの海とサンゴ礁が広がり、小川がいくつも流れていて飲み水には困らないし、その辺を歩くヤドカリを餌にして魚を釣ったり、ヤシガニを食べたり、気が向いたら海に潜って魚を突いて、昼寝して、たまにヒッチして街にでて食料を買い込んできて、夜はその辺の人たちと火を焚いて酒を呑む。

みたいな感じの日々を過ごしていた。







都会に住んでいると、月を見ることも海を見ることもないけれど、それだけ海の目の前にいると、海の満ち引きと月の動きがリンクしていることが肌で感じられる。





日本の旧暦は太陰太陽暦といって、月の初めの一日が新月で、十五日目が満月になるようにできている。東京ではあまり使わなくなってしまったけれど、今でも沖縄の人たちはこの、月の動きにあわせた暦をよく使う。



厳密に言うと微妙にずれているけど、基本的には新月(一日)や満月(十五日)の近くになると干潮と満潮の差が大きい大潮になるし、半月(七日・二十二日)の頃はその差が小さい小潮になることが簡単に分かるので、海の近くで暮らすには非常に合理的な暦だな、とその時感じた。







世界には他にも色んな暦があって、太陽を崇拝していたインカでは太陽の動きを元にインカ暦を作り上げ、特に太陽の力が一番弱くなり、そこから再生していく冬至を一年の始まりとし、盛大に祝う。(これが南米三大祭りの一つ、ペルーのインティ・ライミと呼ばれる祭り。)



北欧では今もミッドサマーと呼ばれる祭りがあって、火を焚いて(&お酒を呑みまくって)夏至を祝うというし、そもそもクリスマスは元々冬至を祝う「異教徒」の祭りだったものをキリスト教が取り込んで、キリストの誕生日にしたてあげたものと言われている。



日本のお盆だって昔は十五夜の満月の日にやっていたわけで、今風に言うなら盆踊りはフルムーンパーティだったのでしょう。







そんな風に、空を見上げて、月を見て、星を見て、太陽を見て、その動きを感じて昔の人が作り上げてきたのが暦なわけです。









さて、我々が今使っている「西暦」ですが、これはグレゴリオ暦と呼ばれ、古代ローマで使われていた暦が元になっているのだけれど、そのめちゃめちゃっぷりが面白い。



6月まではまあいいとして、7月はかの有名なジュリアス・シーザーが勝手に「これは俺の月!」と決めたので名前がJULYなった。そしてその後の皇帝アウグストゥスが「じゃあ8月は俺の月!そしてJULYより少ないのは気に食わない!」ということでAUGUSTと名づけられて31日になった。



そのおかげで2月は減り28日になっているし、9月のSEPTEMBERのSEPTはラテン語で「7」、10月のOCTOBERのOCTOは「8」(蛸が英語でオクトパスなのは八本足だから)、11月のNOVEMBERのNOVEは「9」、12月のDECEMBERのDECEは「10」を意味する。





つまり7月を9月と呼び、8月を10月と呼び、9月を11月と呼び、10月を12月と呼んでいるのがこのグレゴリオ暦なわけです。しかも1月1日に何の天文学的な意味もないし、春分も、夏至も、秋分も、冬至も、満月も、新月も、どこにも一致しない。










ということで、個人的にはこの暦、全く美しくない。







暦というのは生活を反映するんだと思う。



このグレゴリオ暦の正月が巡ってくる度に、我々現代人がいかに自然から離れた生活を送っているか、ということを感じずにはいられません。







とは言えめでたいことが多いのは良きことです。
なので、結論としては

Merry Christmas, Happy New Year, & Happy Solstice !



どうぞ皆様よいお年を!
新しき年が素晴らしい一年となりますよう






2014年12月15日月曜日

快眠のコツ その1 〜 睡眠と光








食事とならんで健康の要となるのが睡眠です。



つい最近、アメリカでCIAによるテロ容疑者に対する拷問の実態が明らかにされ話題となっていますが、その一つに眠らせない拷問というのも入っていたようです。この眠りをうばう拷問というのは、昔からどの国にもあるようで、とことんやると幻覚・幻聴に襲われ、最後には死に至ると言われています。




(ただし普通はいくら不眠といっても、そうなる前に必ず眠りに落ちるように体はできているので、不眠でお悩みの方はご心配なさらないでください。ちなみにギネスブックによる、普通の人が全く眠らずに過ごした最長記録は約11日だそうです。「私はもっと寝ていない」という方はギネス記録にチャレンジしてみるのも面白いかもしれません。)





「寝る子は育つ」と昔から言われますが、実際に科学的にも、眠っている間に放出されるメラトニンなどの睡眠物質により体の免疫作用が高まることや、成長ホルモンの働きにより成長の促進・体のあらゆる細胞の修復や再生・疲労の回復などが行われていることが分かっています。

(よく「睡眠をとることがお肌に大切」と女性が言うのも、この成長ホルモンの働きによるものです。)



また、夢は神様からのお告げという説もあれば、フロイトの様に潜在意識の願望を満たしているという説などもありますが、現代では、睡眠時に夢を見ることによって脳の記憶や情報が整理されている、という説が一般的になっているようです。

経験は全然ないけど体の勢いだけはある10代・20代ならいざ知らず、そこそこの歳になれば、きちんと眠らずに過ごした次の日の体のだるさや、集中力のなさ、イライラ感は誰もが経験したことがあることでしょう。



私たちにとって、よい睡眠をとることは、毎日を気持ちよく、すこやかに過ごしていく上で、決定的に大切な要素の一つです。






ということで、今回から眠りの質を高めるコツについて、3回くらいに分けて書いてゆきたいと思います。




まず今回はその1.「光」です。

「光」が私たちの睡眠のリズムや質に影響を与えているということを知っていたでしょうか?




私たちには体内時計と呼ばれるものが体に組み込まれていて、基本的には毎日自分が寝ている頃になると眠くなり、起きる頃になると目が覚めるように体ができています。


ただしこの体内時計は、地球の一日よりやや長い約25時間に設定されています。これはつまり、放っておくと毎日眠る時間は一時間ずつ遅くなっていって、今日の就寝時間が22時なら明日は23時、その次は0時…という風になっていくということです。

(このことは外界からの影響を全く受けない隔離された部屋での実験により証明されています。)





でもそれだと地球で暮らしていくには何かと不便なので、この体内時計は光をあびるとリセットされるように出来ています。それによって、私たちは基本的には24時ごとに、毎日決まった時間に眠くなるような体の構造になっていて、毎日の生活をリズムよく暮らせるようになっているわけです。





さて、この体内時計をよい方向に動かすためには、朝起きたらまず窓を開けて外の光を浴びることが大切です。朝の光を浴びることによって時計が調節されて、その15時間後に眠くなるように私たちの体はできています。


少し専門的になりますが、これは朝の光を浴びてから15時間後に、メラトニンというホルモンが脳から放出されるためで、このメラトニンこそが眠気を引き起こしてくれる物質です。またこのメラトニンには、どんなSODサプリよりも強力な抗酸化作用があり、免疫を高めてくれる力があると言われています。




なので、まず朝起きたら光を浴びましょう。






そして気をつけなければいけないのは、この体内時計は眠る前に光を浴びるとどんどん悪い方向にずれてゆき、また睡眠時に放出されるメラトニンの量が減ってしまうことです。


ここでいう光というのは、電気による光も含みます。特にPCや携帯の画面、テレビ、LED照明などはブルーライトを多く含み、このブルーライトは強烈に時計を狂わせることが知られています。(また、PCや携帯、テレビは脳を興奮させるので、そういう意味でも寝つきは当然悪くなります。)





それは、簡単にざっくり言うと、睡眠の質を高め、次の日の活力を得るためには、寝る前1~2時間は部屋を暗めにして、電子機器は使わないことが大切だ。ということです。

そして寝ている時は部屋は暗くしましょう。寝ている時にろうそく一本の明るさがあるだけでも、メラトニンの放出量が減ると言われています。



白熱灯はエコの観点からだんだん減りつつありますが、健康的な観点から言えば、少なくとも眠る前はLEDや蛍光灯ではなく、白熱灯の方がよいでしょう。






電気が発見される以前、私たちはごく自然に大きな自然のリズムと共に暮らしていて、昼は明るく、夜は暗いのが当たり前でした。


宇宙船から地球を撮った写真を見ると、夜でも光り輝いている部分があってそれはとても綺麗ですし、また光り輝く街の夜景は遠くから見るととても美しいです。電気のおかげで「便利」にくらせる様になったのは確かですが、その便利さと引き換えに私たちは多くのものを失ったのかもしれません。





それはさておき、

「寝ても寝ても疲れがとれない。」
「夜中に目が覚めてしまう。」
「ぜんぜん寝付けない。」


という方はまず光を意識してみてください。


朝の光を浴びること。夜は暗くして、電子機器をなるべく使わないこと。

が大切です。





次回は体温という観点から眠りについて書きたいと思います。


2014年12月5日金曜日

死体のポーズでリラックス



日本ではなぜか「女性が美容のためにやるもの」というイメージが非常に強いヨガですが、その本来の目的は、仏教と同じく「苦しみの輪廻の輪から解脱すること」で、ヨガはそのための修行法であり、悟りの境地(サマーディ)に至るための「道」の一つです。



悟りとか輪廻とか解脱とか言うと、やたらと小難しく、また宗教的に聞こえますが、平たく言えば「ゆるぎない心の平安を得る」ことがその目的である、という程度に僕は解釈しています。



なので当然、ポーズ(アーサナ)が綺麗にできるようになること自体がヨガの本来の目的ではないし、ましてやできるポーズの数が増えればいい、というものではありません。(はず。)





ちなみにヨガの八つの階梯(アシュタンガ)の初めの一つ、「ヤマ」と言われる5つの戒は、仏教の五戒とほぼ同じもので、よくヨガクラスでやる「アーサナ」や「プラーナヤーマ」はその八つの階梯の3番目と4番目にあたり、「サマーディ」が8つ目の最終段階ということになっています。









そんなヨガの数あるポーズの中で、誰にでもできて、一番役に立つ、と個人的に思うものを2つご紹介したいと思います。





その1つは瞑想・座禅のポーズ。
もう1つは死体のポーズです。





一つ目の瞑想・座禅のポーズというのは、結跏趺坐とか半跏趺坐とか、あるいは達人坐とか呼ばれる坐法で、要は座禅や瞑想のことです。元々遥か昔には、ヨガにはこの1つのポーズしかなかったと言われるくらいなので、その重要性は言うまでもないでしょう。



近年アメリカのビジネス界で瞑想が流行したことがきっかけで、日本でも瞑想の効用が見直されつつありますが、個人的体験からも、瞑想は心身を整えるためにもとても有効な手段だと実感しています。



瞑想については色々と書きたいことがありすぎて長くなるので、またの機会に譲りたいと思います。







二つ目の「死体のポーズ」、シャヴァーサナが今回の主題です。やり方はいたって簡単、仰向けになって寝転んで、体の一つ一つのパーツから力を抜いていき、意識を保ったまま完全にリラックスする。それだけです。



とかく日常生活でがんばっている我々は、体中のそこかしこに余計な力が入っています。それに意識を向け、気がついて、ちゃんと早い段階でケアしてあげれば何も問題はありません。


しかしそのまま放っておくと、段々と心身のバランスが乱れていきます。そしてその乱れが違和感になり、違和感が痛みになり、強い痛みや不調へと変わっていきます。この強い痛みや不調が出た時には、既に体はかなり悪い状態になっていて、そこまで行くと自分の力だけで治すことは難しくなりますし、治るのにも時間がかかります。





この傾向は頑張っている人ほど顕著で、そういう方は気が張っているので、気持ちがリラックスしていればすぐに気がつく様な、ちょっとした「自分の心身の異変」に対して非常に鈍感になっています。


「これくらい大丈夫、まだまだ大丈夫」と自分に言い聞かせているうちに、ある時、風船が段々とふくらんでいって破裂する様に、一気に自分が溜め込んできたものの大きさに気がつく時がくるかもしれません。そしてその時にはわりと手遅れなこともしばしばです。仕事柄、そうなってから後悔した方達を今まで散々みてきました。





何かに向かって頑張っている姿は魅力的ですし、それは素晴らしいことだとは思いますが、何事もメリハリが大切で、頑張っていればいるほど、むしろ逆に人よりも、リラックスする時間を意識して作ってあげることが、陰と陽のバランスとして必要なのではないではないでしょうか?







まずは、自分の体の感覚に意識を向けて、風船の状態に気がついてあげてください。気が付くことができたとしたら、それだけで確実に何かが変わっていきます。

そのためにも、この死体のポーズはオススメです。









ところで、ヨガの行者の中には自らの意思で、心臓の鼓動を止める(緩める)ことができる方がいらっしゃるそうで、それは科学的にも測定され、データとして残っているようです。


そしてインドにはなんと、仮死状態になって棺に入り、地中に埋められ、一月後に掘り出されて蘇生する。という究極の荒行があるそうです。


とは言ってもこの荒行、3人に2人はそのまま死んでしまうそうなので、そこまで頑張って修行してきたのに、そんなことするのに何の意味があるんだろう?と思わないでもないですが、そこが「一生片手を上げて天を支える!」という誓いをした行者もいれば、「一生片足をつかない」という行をする方もいる、インドの奥深さなのでしょう。







そんな行は我々には及びもつかない全く関係ない世界ですし、ヨガのポーズの一つにある足を自分の首の後ろにかけられる様になるポーズなども、勿論見ていてすごいな、とは思いますが、別に私たちのような普通の人がそれをできるようになる必要は全くないでしょう。









ですが、今回ご紹介したこの死体のポーズは、それがちゃんとできるだけで、心身の状態は確実に格段によくなること間違いなしです。どうぞ試してみて下さい。





自分の体と心の隅々に意識を向けてあげること。

自分の体と心に「今起きていること」に気がついてあげること。



全てはそこから始まるし、またそこに尽きるのではないかと思います。