2015年10月15日木曜日

代替医療は効く?効かない?





かれこれ4・5年前、友人に薦められて『フェルマーの最終定理』という本を読みました。

この本はサイモン・シンというイギリスの作家が書いたノンフィクションの小説で、何世紀もの間証明を拒んできた数学界の最大の問題の一つ、「フェルマーの最終定理」を証明しようとしてきた数学者達の苦闘と、1995年についにこれを証明した現代の数学者の執念や努力を生き生きと描いた傑作で、随分前に読んだのに今でも心に残っているほど面白い本だったことは今でも覚えています。(数学者でない我々一般人が読んでも面白いので是非読んでみて下さい。)




その同じサイモン・シンが、鍼やカイロプラクティック・ハーブ療法など、様々な「代替医療」について書いた本があってずっと気になっていたのですが、先日とうとう500ページ以上ある分厚いその本を読みました。



『代替医療のトリック』(原題 Trick or Treatment)という題名のこの本は、ざっくりまとめると、「鍼・カイロプラクティック・ホメオパシー・ハーブ・オステオパシーなど、現代西洋医学以外のほぼ全ての『代替療法』は全て全く治療効果に対する科学的な根拠がなく、報告されている改善例はおよそ全てプラシーボによる効果であって、この様な非科学的な『代替療法』は全て廃止されるべきである」というような内容でした。






僕は個人的には自分のやっていることはれっきとした正当な「医術」だと思っていますが、世の中的には「代替医療」に分類されるのでしょうから、そこに携わるものとしてこの本の内容に反論点は多々ありますが、世の中にはこういう意見も多いのもまた事実です。



現代主流の西洋医学では、基本的に耳に問題があれば耳だけに着目します。同じ様に鼻に問題があれば鼻だけを、腰の問題は腰だけを、膝の問題は膝だけを、という風に体をパーツパーツに分けて問題を解決しようとすることが多いように思えます。

もちろんそれで治る人も一杯いますし、西洋医学でしか治らない人も数多いのも間違いの無い事実だと思いますが、体はそんなにシンプルにできてないのもまた否定しようのない真実だと知っています。






そう思い始めたのは、まだ中学生の頃、とにかく普通に生活するのも辛いくらい体の調子が悪かった時、痛みや不調が左耳・左鼻・左腰・左膝という様に全ての左半身に出ていて、自分の体の感覚ではそれぞれの痛みは明らかに繋がっていたのに始まりますが、もちろんお医者さんに行ってそういうことを言ってみても「そんなことはありえない」、と全く取り合ってもらえず、納得のいかない思いをしたことを覚えています。


それから随分時が経ち、武術や瞑想の修練をつんで自分の心や体を深く知り、更に治療の道に入って実際に自分がある程度色々な症状を治せるようになった今になってみて、あの時の「繋がっている」という直感はやっぱり間違っていなかったな、と強く思います。





例えば、何故なのかは全く説明できなくても足の脛のツボを使って胃の調子を整えることが出来るのはまぎれもない事実だし、頭の骨を整えることによって腰の歪みが整って痛みが減ったりするのもまた事実です。実際にそれを体感して頂けばで分かると思いますが、これはどう考えてもプラシーボのようなものではないはずです。






僕が思うに、人間の体や心は今の科学や医学で解明されているも遥かに奥が深くて、分かっていることなんてほんのごく一部でしかありません。

地動説が廃れて天動説が広まったように、そんな体と心の深淵がより深く解明され、「正しい」知識が広まって、この本に書いてある様な意見が「そんなこと言ってた時代もあったよね」と言われる日がいつかきっと来ることでしょう。僕も技と心を磨き、皆様の健康をサポートするだけでなく、その様な医学の進歩に貢献したいと思っています。






ちなみに体や心について、今まで読んだ中で僕が一番お薦めの本は、『人はなぜ治るのか』(アンドルー・ワイル)です。医療に関わる全ての方だけでなく、心や体や健康に興味がある全ての方に読んで頂きたい一冊です。




(彼は西洋医学と代替医療の統合を提唱する、その道で最も著名な医師の一人であり、先日参加した国際フォーラムで開かれた日本統合医療学会のシンポジウムにもいらしていました。)