2015年1月25日日曜日

ストレスと不眠と睡眠薬とお酒 〜 快眠のコツ その3



結婚式のスピーチや大事なプレゼンの時など、大勢の人の前で何かしゃべらなければいけない時、心臓がドキドキし胸が苦しくなるのは誰もが一度は経験したことがあるのではないかと思います。



なぜああいう風になるのでしょうか?





私たち「人」という種が、今のように強力な武器を獲得する前、世界は危険に満ちていました。獲物を狩りに行く途中や、木の実を採りに行く途中、バッタリ猛獣と出くわすことも少なくなかったでしょう。


そんな時、戦うにせよ逃げるにせよ、持てる力の全てを使う必要がありました。





そこで私たちの体は、「敵」に出会うと、体の隅々の筋肉に血液を送るために血管が広がり、心臓の鼓動が速くなり、血圧が上がるようになりました。その方が生き延びるために有利だったからです。


また酸素をできる限り多く取り入れるために呼吸は激しくなり、目からできる限り多くの情報を取り入れるために瞳孔が開きます。

毛は虫で言う触角みたいなものですから、鳥肌が立ったり髪の毛が逆立つのは多分、より細かな空気の動きを感じとるためでしょう。

また、手のひらから汗が出るのは持っている武器を落とさないためで、足の裏から汗が出るのは動く時に滑りにくくするためと言われています。


そしてそんな時に食べ物を食べたり、眠ったり、排泄したりすることはありえないので、消化・吸収や排泄の機能は抑えられ、覚醒物質がでて眠気は吹き飛びます。





アドレナリンという言葉は誰もが聞いたことがあるでしょうし、使ったこともあるかもしれませんが、体にこういう反応を引き起こすのは、交感神経の指令により放出されるアドレナリン・ノルアドレナリン・コルチゾールなどの「ストレスホルモン」の働きによるものです。







現代の日本では街中で猛獣に出会うことはまずありませんし、幸いなことに今のところ、夜中に敵に襲われることもまずありません。



ただし、「肉体的」な危険がなくなった代わりに、「精神的」な危険は相変わらずそこかしこに残っています。

そして「精神的」な危険や「敵」、いわゆる「ストレス」も、猛獣に出会った時と同じ反応を私たちの体に引き起こし、それらは時に、人を動けなくしたり、殺すことさえあります。



むしろ「肉体的な敵」と違って、それが解消されない限り私たちに24時間付いてまわるだけ、「精神的な敵」の方がたちが悪いのかもしれません。





そんなわけで、私たちの体は強いストレスを受けると血圧は上がり、心拍や呼吸は乱れ、食べたものがうまく消化・吸収されないのでエネルギーは低下し、排泄が抑制されるので便秘になり、そして覚醒物質が出て眠れなくなります。


(結婚式のスピーチや、大切なプレゼンや、好きな人に告白する時にドキドキするのも、私たちの心がそれを「危険」と判断しているからです。)







さて、そんな風にストレスで眠れない時、多くの人は薬かお酒に頼るようなので、それについて一言。





まず睡眠薬についてですが、眠っている時の脳波の測定によって、睡眠薬を飲んだ時の眠りは、飲まない時の眠りと比べて浅いということが分かっています。つまり同じ時間寝たとしても、「薬を飲んで眠った時は眠りの質が落ちる」ということです。



そして「昔の睡眠薬(バルビツール酸系)と違って、今の睡眠薬(非ベンゼジアゼピン系・ベンゾジアゼピン系)は副作用がない」みたいなことが時々言われているようですが、STAP細胞とは違って、副作用は「必ずあります。」

原理的に言って、「望ましい作用だけがあって副作用が全くない」薬はありえません。それは薬を「導入剤」と呼ぼうと、「睡眠薬」と呼ぼうと何も変わりませんし、また睡眠薬以外のいかなる薬でも同じことです。お医者さんや製薬会社の人達がどれだけ何を言ったとしてもそれは間違いありません。



どうしても眠れない時に、短期的に使うのは有効な時もあるでしょう。しかし、睡眠薬を長期に渡って飲み続けるのは、耐性や依存性、副作用を考えると、僕は絶対にオススメできません。


(ちなみにうつ状態になった時もやっぱり眠れなくなります。効鬱剤に関しては「うつ病のマーケティング」に書いたので、興味があればそちらもご覧になってみてください。)







「一杯やると寝つきがよくなる」という理由で夜にお酒を飲んで眠る方も多いようですが、お酒もまた同様です。実はアルコールを摂取すると確かに寝つきは良くなりますが、逆に途中で目が覚めやすくなります。

つまり薬と同様に、お酒も眠りの質を悪くします。







ということで、薬もお酒も快眠を奪います。

なので、前回までに書いてきた光や体温に気をつけつつ、根本であるストレス、「心の問題」を解決するのが、より良く眠るためには最も大切なことです。





(ちなみにストレスや心の問題を解決することが大切なのは、睡眠に限らず、高血圧でも、不整脈でも、便秘でも、なんでも同じです。薬を飲めば血圧は下がるでしょうし、トイレには行きたくなるかもしれません。でも根本を正さずに、もれなくおまけで副作用が付いてくる薬で症状を抑えることに、一体どれほどの意味があるのでしょうか?)







ついでに書いておくと、私たちが生き残るのを助けてくれた有難い「ストレスホルモン」も、慢性的なストレスにさらされて放出されすぎると、胃潰瘍や胃の痛みを引き起こし、高血糖になって糖尿病になりやすくなりますし、免疫力が落ちて風邪を引きやすくなり、病気や傷は治りにくくなります。


また脂肪代謝が狂って太りやすくなり、筋肉は落ちて骨はもろくなります。そしてストレスホルモンと同時に男性ホルモンも増えるので、女性でもヒゲが濃くなったりニキビが増えたりしますし、ストレスホルモンを作るためビタミンCが消費されて、結果的にしみが増えたりもします。


また敵のいる環境で子育てをするのは安全でないからか不妊も引き起こしますし、アドレナリンの麻酔作用で痛覚や感覚が鈍くなるので、体内で病気や不調が進行していても気がつきにくくなります。




つまり一言で言うと、ストレスや心の問題を放置しておくと、何一つ良いことはありません。







ではストレスや心の問題を解決するにはどうしたらよいのでしょうか?





それにはいくつかのアプローチがあります。



楽しく時を過ごせるようなことをするのがストレスを「散らす」一番簡単な方法で、それは人によってはお風呂に入ることかもしれないし、歩くことかもしれません、また好きなスポーツをすることもよいでしょう。(個人的には、登山やハイキング、サーフィン、スキーなど自然の中で体を動かすのが一番よいような気がします。)


ストレスや問題の多くは、そうして過ごしている内に時が解決してくれるでしょう。





それより更に根の深い問題やトラウマなどは、時間が解決してくれることはあまり望めません。日本ではまだそれほど一般的ではありませんが、カウンセリングやコーチングを受けてみるのがとても有効だと思います。僕もそれらを学んでいますし、専門分野や得意分野の異なる色々なカウンセラーやコーチも知っています。もしご興味があればHPからご連絡ください。





また心と体は深く結びついているので(→詳しくは「ココロとカラダ」もご覧ください)、体からアプローチをすることもとても有効な手段です。体が変わると実際に物事に対する感じ方も変わりますので、カラダからストレスや心の問題を解決することもできます。特に頭やお腹は心と深く結びついていて、そこは僕の治療の専門分野なので、お手伝いできることがあると思います。是非ご相談ください。





そして最後に、もし今、何かしらストレスや心の問題を抱えているとしたら、何よりも大切なのは、周りの環境のせいにしたり、人を責めるのを止めて、「自分が変わる」ことです。

このブログ(特に「ココロ」の投稿)にも、そのために参考になりそうなことを書いているつもりですし、これからも色々と書いていこうと思っていますので、時々覗いてみて下さい。





「瞑想」も、時間はかかりますが、ストレスや心の問題を本当の意味で深い部分から解決するためにとても有効だ、と20年近い自分の瞑想体験を通じて感じています。なので、そろそろ瞑想についても書いてみようかと思います。






では今回はここで











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