2016年5月19日木曜日

痛みと原因が違う場所にある??? 〜 放散痛



先日ふとテレビをつけたら医学系の番組をやっていて、「放散痛」という言葉があることを知りました。



その番組はまず実際の体験談から始まり、心筋梗塞を3・4回経験したという70代の男性が出てきて、40代の頃のある時から猛烈な左肩のコリ/痛みに悩まされ始め、その何年後かに急に胸が苦しくなって救急車で運ばれて、心筋梗塞を起こしていると診断された、という話をされました。それからも心筋梗塞になる前には必ずまず左肩の強いコリがあったそうです。

番組に出演していたお医者さん達のそれに対する説明はこうでした。心臓と脳をつなぐ神経は、左肩と脳をつなぐ神経の近くを走っているため、時々混線を起こしてしまい、本来痛みがあるのは心臓なのに、痛みを感じるのは左肩ということがある、と。




この様に実際に不調を起こしている本来痛むべき場所でなく、違う所が痛むことを「放散痛」と呼ぶそうです。

番組では他にも、左の肩のコリを感じるようになってしばらくしてから狭心症の発作を起こした方や、右肩のコリがずっと治らなかったのが、ある時C型肝炎にかかっている事が分かり、その治療がうまくいったらその右肩のコリがなくなったという方、胆石があると診断された前後から右肩のコリを感じるようになった方などが出てきて、背中や肩に強いコリや痛みがある時は内臓の不調がある可能性があるから注意しましょう、という結論でした。




野口整体や東洋医学には「背中のこの部分が痛い時はこの臓器が悪い」というような知識が伝わっていて、僕はよくそれに従って「この右肩の痛みは肝臓ですね」とか、「この左肩のコリは胃ですね」とか、「この腰痛は腎臓ですね」とかいう風に言うことがありますが、西洋医学風に説明するとこういう風になるんだな、と面白い発見でした。

気功や鍼の治療では、例えばその左肩に心臓の治療をする点穴(つぼ)があったり、右肩に肝臓を治療する点穴があったり、更に言えば足のすねに胃の治療穴があったり、お尻に腎臓の治療穴があったりするのですが、そういう発想は今の西洋医学にはありません。

長年に渡る人々の体験と、名もない数々の天才達のひらめきによって積み重ねられてきた知恵でありながら、現在は「科学」で証明されていないために信じない人もいるこういった治療法も、もしかしたらいつか神経のつながり、あるいは他の理屈で解明される日がくるのかもしれません。

個人的には、自分の体感や以前不調だった時の体験、色んな方をみてきた経験からも、体の各部にまだ解明されていない不思議なつながりがあることは、科学の証明を待つまでもなく明らかなのですが、こういうことが広く理解されるようになるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。











話は変わって最近、昔予備校の講師をしていた時の生徒の結婚式に呼ばれて乾杯のスピーチをしてきました。研修期間を終えて正式に医者になる彼は、僕が講師をやめて世界旅行に出る時も寄せ書きをしてくれたり、出発の時はわざわざ成田空港まで見送りにきてくれたりと、とてもよく慕ってくれた子なので、中学生だった彼の立派な晴れ姿を見て、何だかとっても感慨深かったです。

他の教え子達も皆20代の後半になり、恋に仕事に悩んだりしながらも皆立派に成長してがんばっているので、「藍より青し」と言われない様に僕もがんばらなきゃ、と思う今日この頃です。医師になった子が多いのですが、その一人の子はなんと今度初給料でご飯をご馳走してくれるというので何だか嬉しくなりました。楽しみです。



他に最近の出来事としては、この3・4年お休みしていたロッククライミングを再開し、旅してた頃グアテマラ会った友達を相棒に外で岩を登るようになりました。昨日も伊豆に行っていたのでこれを書いている今日も筋肉痛です。




今年の五月は気持ちのいい晴れ間が続きますね。
皆様はいかがお過ごしでしょうか?







2016年4月15日金曜日

お客様の声 : 70代男性 - 腰痛・ふくらはぎの痛み


腰痛・ふくらはぎの痛み


不思議な体験をしました、何か月もとれなかった腰痛直ぐに治ったのです!


清水先生のやり方はマッサージをするのではなく、またカイロプラクティックのように体を捻らせることもなく、ただ掌の平と指先を体に当てるだけのです。




私が腰痛だと言って診てもらうと、全然関係のないと思う部分にずっと手を当てていたのです。また、頭に手を当てていたと思ったら、いつの間にか寝てしまい目が覚めたら頭はスッキリしていました。



しかし、肝心の腰痛は治らず、やや不満のうちに終了したのですが、不思議なことに2日ぐらいすると腰の痛みがなくなっていました


どうして治ったのかと後日聞いたところ、私の腰痛は内臓の疲れとアンバランスから来ているものだったので、やや疲れているその内臓を刺激したからなのだと言われるのです。人間の体は自然治癒力を持っていて、それをチョット刺激してやれば腰痛も勝手に直るのだとか。





その次に足のふくらはぎが痛くて行った時にも、不思議と痛みが消えました


ゴルフ場の谷底に降りる時に滑って、左足ふくらはぎの膝の付け根部分を傷めてしまい、一月ほど経っても何時までも痛みが残り苦労しました



今までの経験からすると、恐らく靱帯が何本か切れてしまった為であろうと諦めていましたが、念のため清水先生に診てもらったところ、痛い部分に手を当てていた後、左足の下の方に簡易鍼を3箇所ほど貼ってくれました。



これだけで大丈夫なのかと疑心暗鬼でしたが、翌朝起きてみると、ふくらはぎの痛みはどこかに消えていました


後日、何故治ったのかと清水先生に聞いたところ、その部分の筋肉が緩みすぎて弱くなってしまっていたので、その部分を刺激し締めて強くしたので即効があったのだろうとのことでした。



S・H様  70代男性 企業経営コンサルタント




筋肉は悪くなると固くもなりますが(「実」 - いわゆる「こり」)、もっと悪くなると伸びてしまったゴムの様に弾力がなくなり伸びてきます(「虚」)。

この「実」の状態は押したり揉んだりすることでよくなることもありますが、「虚」の状態は押しても揉んでも決して良くはなりません


この「虚」している緩んだ筋肉に「気」を送り、力をつけてあげるとこのように直ぐに症状が改善することは珍しくありません。



この方のふくらはぎには「虚」している部分があったので、そこを処置しました。腰痛は胃の働きの弱りから来ていたようなので、胃や脾の気を高める治療をしました。






治療のご予約・お問い合わせは
Eva Cuore Body (03-6804-6766)







2015年10月15日木曜日

代替医療は効く?効かない?





かれこれ4・5年前、友人に薦められて『フェルマーの最終定理』という本を読みました。

この本はサイモン・シンというイギリスの作家が書いたノンフィクションの小説で、何世紀もの間証明を拒んできた数学界の最大の問題の一つ、「フェルマーの最終定理」を証明しようとしてきた数学者達の苦闘と、1995年についにこれを証明した現代の数学者の執念や努力を生き生きと描いた傑作で、随分前に読んだのに今でも心に残っているほど面白い本だったことは今でも覚えています。(数学者でない我々一般人が読んでも面白いので是非読んでみて下さい。)




その同じサイモン・シンが、鍼やカイロプラクティック・ハーブ療法など、様々な「代替医療」について書いた本があってずっと気になっていたのですが、先日とうとう500ページ以上ある分厚いその本を読みました。



『代替医療のトリック』(原題 Trick or Treatment)という題名のこの本は、ざっくりまとめると、「鍼・カイロプラクティック・ホメオパシー・ハーブ・オステオパシーなど、現代西洋医学以外のほぼ全ての『代替療法』は全て全く治療効果に対する科学的な根拠がなく、報告されている改善例はおよそ全てプラシーボによる効果であって、この様な非科学的な『代替療法』は全て廃止されるべきである」というような内容でした。






僕は個人的には自分のやっていることはれっきとした正当な「医術」だと思っていますが、世の中的には「代替医療」に分類されるのでしょうから、そこに携わるものとしてこの本の内容に反論点は多々ありますが、世の中にはこういう意見も多いのもまた事実です。



現代主流の西洋医学では、基本的に耳に問題があれば耳だけに着目します。同じ様に鼻に問題があれば鼻だけを、腰の問題は腰だけを、膝の問題は膝だけを、という風に体をパーツパーツに分けて問題を解決しようとすることが多いように思えます。

もちろんそれで治る人も一杯いますし、西洋医学でしか治らない人も数多いのも間違いの無い事実だと思いますが、体はそんなにシンプルにできてないのもまた否定しようのない真実だと知っています。






そう思い始めたのは、まだ中学生の頃、とにかく普通に生活するのも辛いくらい体の調子が悪かった時、痛みや不調が左耳・左鼻・左腰・左膝という様に全ての左半身に出ていて、自分の体の感覚ではそれぞれの痛みは明らかに繋がっていたのに始まりますが、もちろんお医者さんに行ってそういうことを言ってみても「そんなことはありえない」、と全く取り合ってもらえず、納得のいかない思いをしたことを覚えています。


それから随分時が経ち、武術や瞑想の修練をつんで自分の心や体を深く知り、更に治療の道に入って実際に自分がある程度色々な症状を治せるようになった今になってみて、あの時の「繋がっている」という直感はやっぱり間違っていなかったな、と強く思います。





例えば、何故なのかは全く説明できなくても足の脛のツボを使って胃の調子を整えることが出来るのはまぎれもない事実だし、頭の骨を整えることによって腰の歪みが整って痛みが減ったりするのもまた事実です。実際にそれを体感して頂けばで分かると思いますが、これはどう考えてもプラシーボのようなものではないはずです。






僕が思うに、人間の体や心は今の科学や医学で解明されているも遥かに奥が深くて、分かっていることなんてほんのごく一部でしかありません。

地動説が廃れて天動説が広まったように、そんな体と心の深淵がより深く解明され、「正しい」知識が広まって、この本に書いてある様な意見が「そんなこと言ってた時代もあったよね」と言われる日がいつかきっと来ることでしょう。僕も技と心を磨き、皆様の健康をサポートするだけでなく、その様な医学の進歩に貢献したいと思っています。






ちなみに体や心について、今まで読んだ中で僕が一番お薦めの本は、『人はなぜ治るのか』(アンドルー・ワイル)です。医療に関わる全ての方だけでなく、心や体や健康に興味がある全ての方に読んで頂きたい一冊です。




(彼は西洋医学と代替医療の統合を提唱する、その道で最も著名な医師の一人であり、先日参加した国際フォーラムで開かれた日本統合医療学会のシンポジウムにもいらしていました。)








2015年8月30日日曜日

お客様の声 : 30代女性 - 冷え症・生理不順・生理痛


冷え性・生理不順・生理痛



表参道から少し小道に入った、閑静なエリアの地下一階に、とても素敵な雰囲気の施術室があります。私は信頼する友人の勧めでこちらに通わせていただきました。



当時の私は、末端冷え症、生理不順、生理痛、腰痛、肩の痛みなど、全身がガチガチの硬直状態でしたが、先生の丁寧なカウンセリング、手当てをしながら気を流す施術をしっかり、じっくりしてもらうこと半年、見事に症状はなくなりました


今ではかつてまばらだった生理周期も平均的になり生理痛も前ほどなくなり冷えが解消された事により、色んな身体の不調もなくなりました



とても素敵な空間ですし、先生もとても素敵な方です。

効果がじわじわと効いてくる、不思議な気功整体です

ぜひ一度体験していただく事をお勧めいたします。



S・Y様  30代女性








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Eva Cuore Body (03-6804-6766)








2015年7月6日月曜日

ルビンの壺と人生





人生ってこの絵みたいなものなのかもしれないな、と今朝起きてふと思いました。



この有名な「ルビンの壷」の絵は、見方によって壷にも向かい合った顔にも見えますが、人生も、見方によって、黒くもなれば白くもなるのでしょう。







私たちは毎日あらゆることに価値判断を加えて生きています。


同じコップを見ても、人によって「あと半分しかない」と思う人もいれば、「あと半分もある」と思う人もいる。

同じように、雨が降っても「ああ嫌だな、ぬれちゃう」と思う人もいれば、「ああ気持ちいい」と思う人もいる。





昔の人達はどうだったのか知らないけれど、どうも私たちの生きるこの現代では、放っておくと、私たちの心は「足りない」部分にフォーカスしがちなようです。



朝起きて、「腕もついてるし、目も見えるし、雨風がしのげる屋根の付いてる所で寝られて、しかもご飯もちゃんと食べられて、ああなんて幸せなんだろう」と思っている人はめったにいない気がします。


寝ても覚めても、「あれが足りない、これが足りない、あれがあれば、これがなければ、」そんなことを考えながら生きているのが普通でしょう。もちろん僕もそうです。





どこかにちょっと傷がある時は大げさに騒ぐわりには、「どこにも傷がない」ということに対しては何とも思わない。

ちょっと熱がある時は辛い辛いと言うけれど、「熱がない」時は「あ~嬉しい」とは思わない。

どこかに痛みがあると周り中の人にあそこが痛いとかここが痛いとか言うわりに、「痛みがない」時は「ね~ね~聞いてよ、どこにも痛みがなくてもう最高」とは言わない。(痛みがあって治った時は言うけれど)




よく考えてみると、それってわりと不思議なことなのかもしれません。







「失ってそのありがたみに初めて気が付くこと」が世の中にはたくさんあるけれど、「失う前にそのありがたみに気づいていられる」ことが幸せに生きるコツなのかもしれません。



目が見えて「あたりまえ」、耳が聞こえて「あたりまえ」。手も足もちゃんと動いて、ご飯が食べられるのが「あたりまえ」。誰かがご飯をつくってくれるのも「あたりまえ」で、お金を稼いできてくれるのも「あたりまえ」。電車が時間通りに動くのも「あたりまえ」で、蛇口をひねれば水がでるのが「あたりまえ」。





でもそれってほんとに「あたりまえ」?


蛇口をひねって水が出たら「お~!今日は水が出る!」と思う地域は世界にたくさんあるし、そもそも世界には水道がない地域の方が広い(はず)。

がんで余命を宣告されたら、生きているのを「あたりまえ」とは思えなくなる。

東京の大空襲の燃え盛る炎の中、子供を抱えて走っていた僕の祖母は、平和な暮らしを「あたりまえ」とは思わなかったはず。(少なくともその時は)






「あたりまえ」だと思ってると、感謝もしないし、価値も感じない。

そんなわけで、「あたりまえ」と思っていることが実はすごいことだ、と気が付くことが、幸せに生きるための第一歩なのかもしれません。





そんな「あたりまえ」と思っていることに一つ一つ気が付いて、感謝の気持ちが湧いてくれば、人生はどこにいようと、何をしていようと、わりと楽しくなってくるのかもしれません。








2015年6月30日火曜日

お客様の声 : 30代女性 - 排卵期の腹痛・胃の不調・冷え・疲労感



排卵痛・胃の不調・冷え・疲労感でお悩みだった女性から頂いたご感想です。少し長いですが、かなり珍しいケースだったので、そのまま載せています。



私は幼い頃から、原因不明の右下腹部の腹痛に時折悩まされてきました。

そのせいで何度か、盲腸の疑いの診断を受けたのですが、検査をすると盲腸ではなく、全く原因がわかりませんでした。



20代半ばの頃でしょうか、たまたま受診した婦人科医院で、基礎体温をつけることを勧められ、なんとなく基礎体温計測を始めてみると、どうもその腹痛は排卵期前後に起きていることがわかりました。

インターネットや本で調べてみると、「排卵痛」というもののようでした。鈍い痛みがほとんどなのですが、ある時耐えられない程の痛みに襲われ、婦人科を受診しました。

その時受けた検査で、双角子宮だということが発覚しました。いわゆる子宮奇形です。実は、3歳の時に右の鼠径ヘルニアで手術をしているのですが、その位置も普段痛みを感じる右下腹部に近く、どうも胎児期にその周辺の発達がうまくいかなかったようです。



その時のお医者さん曰く、おそらく双角子宮がその排卵痛に影響しているのでは?との見解でした。但し、かといってその腹痛がなくなることもなく、それからもほぼ毎月その痛みを感じて生活してきました

対処方法もなく、あまり薬を飲むことが好きではありませんが、腹痛が酷い時には仕方なく鎮痛剤を飲んで紛らわせました。

それともう一つ私が長年悩まされていたのが、からだの冷えや、疲れやすさだるさ、寝て起きても疲労が取れずすっきりしない、身体中のこりが取れない、といった体の不調でした。様々な整体やマッサージなどあちこち通い、正直それにいくら費やしてきたのかわからないくらいです(笑)





ある時たまたま、「最近すごく調子がいい!」と言う友人の話を聞いて、ある施術を受け始めてからだというので、すぐに紹介してもらったのが清水先生の施術を受けるきっかけでした。

施術を受けると、からだの中心がぽかぽかと温まっていくような感じを受けます。

何よりも驚いたのは、胃腸の動きがすぐに活発になることです。施術中に胃がぐうぐうと鳴り出します。もともと胃腸が弱く、消化不良を起こしがちな私は、食後わずか数時間でそのようになることはもう何年もなかったので、とってもびっくりしました。

「先生は魔法使いみたいだ!」といつも面白くなってしまうくらいです。




先生の話はとてもわかりやすく、アドバイスを実践するとすぐに、長年悩まされたのが嘘のように目覚めがよくなり、からだが楽になりました

先生によると、私のからだの冷えはどうも婦人科系統からきているとのことで、それを改善する施術を受けさせていただくことになりました。

20年以上悩まされてきている右下腹部の痛みは、排卵期以外でもその箇所を押すとすごく痛むのですが、治療を重ねていくうちに驚くほど痛みが軽くなっていき、ついには辛かったあの排卵通もほとんど感じなくなったのです。




もうこの先ずっと付き合っていくだろうと思っていた痛みだったので、本当に本当に驚きです。

同じ悩みに悩まされている方がいたら、是非教えてあげたいと思っています。

本当にありがとうございました。



S・M様  30代女性 ファッションデザイナー





7回目の施術後に頂いたご感想です。

まず胃を治してから、右卵巣の周りの違和感を取りました。

(その後何回か続けるうち
完全に痛みはなくなったそうです。)







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2015年6月15日月曜日

体からの「便り」 〜 便秘と腸と体のしくみ























「日本人は腸が長くて、西欧人は腸が短い」と言われることがあります。

そして大抵その話はこう続きます。一般的に言って、草食動物の腸は肉食動物より長い。したがって「日本人は本来菜食に向いていて、西欧人は肉食に向いている」と。



しかし、東大とイギリスのセント・マークス病院の共同研究によると、日本人と西欧人の間で腸の長さに特別な違いは認められなかったそうです。

従って「日本人だから肉食は向かない」という説はどうも嘘のようです。





とは言っても、やっぱり肉ばっかり食べていることは確実に体に悪いのは言うまでもありません。

野菜に多く含まれている食物繊維は、殆ど腸に吸収されずにそのまま便として体から出て行ってしまうために、たんぱく質や脂肪や炭水化物と違って「あまり食べても意味がない」という風に考えられていた時代も過去にはあったそうですが、現在では食物繊維をしっかりとることの大切さが広く認められています。







「便」という字は「便り」と書きますが、「便」はまさに体からの「便り」で、自分の生活や体の状態が良い状態にあるかどうかを教えてくれます。

世間では、「便りがないのはよい便り」なんて言葉もありますが、お通じがないのは全くもってよい便りではありません。

便秘は体に大きな悪影響を与えます。
(どうしてなのかは後で書きます。)


食物繊維は小腸や大腸で殆ど吸収されないかわりに、便を排出しやすくしてくれます。最近はやりのスムージーが体に良いと言われるのも、便秘の人は野菜を多めに食べるようにと言われるのも、このためです。









折角なのでこの機会に、知っているようで意外とちゃんとは知らない、私たちの体の根幹、消化器系の仕組みがどんな風になっているのか見ていきましょう。





私たちの口から肛門までは一本の長い長い「管」になっていて、体の「内側」にあるけれども、外部のものと接するという意味では「外側」でもあります。(土管をイメージすると分かりやすいかもしれません。)

そこでこの「管」には、外敵に対する防御の仕組みが色々備わっています。




まず、口に入ったものは食道を通って胃に入り、ここにしばらく留まります。

あまり意識することはありませんが、私たちが口にする食物には、目に見えない小さな小さな虫や、寄生虫や菌やウイルスなどがついています。何かを食べればどうしてもそういうものも一緒に体の中に入ってきてしまうのですが、胃にいる間に、強酸性の胃液によって、その9割方が死ぬと言われています。





胃で滅菌された食べ物は、その後腸に送られますが、それでもまだやっぱり体に有害な菌やウィルスや虫がいた場合どうなるのでしょうか?

「免疫」という言葉はもうすっかり一般的になって、誰もが普通に使うようになりましたが、実は私たちの免疫組織の7割は腸にあり、そういう有害な菌やウィルスが体内に入らないよう、ここでやっつけてくれます。





それでも死なない強力な菌やしぶといウィルスなどは、体に吸収されてしまう前に腸がそれを察知して排出しようとします。O-157などの大腸菌や赤痢に感染すると下痢が止まらなくなるのはそのためです。これは体が異物を外に排出しようとしておこしているので、こういう時の下痢を止めることは非常に危険です。



(ちなみにH2ブロッカーなどの胃薬は胃酸を押さえる働きがあります。胃薬を飲むと胃の気持ち悪さや痛みは止まるかもしれませんが、殺菌が不十分なままの食べ物を腸に送り込んでいるということになりますので、短期的に使うことは場合によっては必要かもしれませんが、それを長期的に使用することは、体にとって最善の選択ではないかもしれません。)







そんな風に、食べ物は食道を通り胃に入った後、小腸で消化・吸収され、大腸へとたどり着きます。

この大腸では、まだ残っている栄養素も吸収されますが、主に水分の吸収が行われ、この大腸に長い間あればあるほど、食べかすから水分がどんどん吸収されてゆきます。便秘になると便が硬くなるのはそのためで、ひどくなるとウサギのふんのようにコロコロとした便になります。





では便秘になると何がよくないのでしょうか?

ちょっと想像してみましょう。
夏の暑い日に食べ物をそのまま放置しておくとどうなるでしょう?

保存料がガンガンに入っているコンビニやスーパーの出来合い品でもない限り、食べ物は傷んで、変な味になり、変な臭いを発する様になりますよね?




腸の中は40℃近くあるわけで、その中に食べかすが3日も1週間もあるわけですから、当然その間には腐敗も進んでいるでしょう。

便秘がひどい人になると1週間とか2週間とか腸の中に食べかすがあるわけですから、その腐敗した食べかすからでる毒素や有害な物質も、大腸から吸収されて血液にのって体を巡ることになります。





ちょっと細かい話になりますが、小腸や大腸で吸収された栄養分や水分は、血管(門脈)に吸収されてまず肝臓へと運ばれ、その後全身を巡る血液の流れに入ってゆきます。

従って、腸から吸収された毒素や有害な物質も、まずは肝臓に向かいます。それは当然肝臓に負担をかけることになりますし、また肝臓で解毒しきれなかった毒素はそのまま体を巡ることになり、方々に様々な悪影響を引き起こします。


腸の状態が悪いと肌があれたりするのも、そういうつながりで考えてみると不思議なことではないのではないでしょうか?







ということで、野菜をしっかり食べることは大切です。

ちなみに食物繊維には、水溶性と不水溶性の2種類があって、水溶性食物繊維は水に溶けてゼリー状になって便をやわらかくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やして、それぞれ異なった働きで便を排出しやすくします。

特に便秘がちな方は、もしまだ意識したことがなかったら、その2つの違いを意識してバランスよく食べるようにするとよいでしょう。詳しくはネットで調べると色々出てくるので見てみて下さい。

(
アボカドとか水で洗っちゃだめそうなものは水溶性繊維が多く、レタスのように水で洗って大丈夫そうなものは不溶性繊維が多いです。)





より深刻な便秘で困っている方の中には、下剤を使っている方も多いと思います。しかし、下剤を常用すると自力で便を出す力が弱まるだけでなく、腸内にメラノーシスと呼ばれるシミができて腸の働きが悪化するので、より多くの下剤を飲まなければならなくなるという悪循環に陥るようです。(ちなみにそれは大黄・センナなどの漢方薬でも同じ。)

それだけ困っている人が多いからか、便秘や腸の不調に関する本は何十冊とありますが、今まで読んだ中ではこの本が一番役に立ちそうだったので、ひどい便秘で本気で悩んでいる方はこの本を読んでみることをオススメします。


『快腸!絶好腸!快便力』松生恒夫







こんな風に、「腸」は体全体の健康にとって、とても重要な役割を果たしています。胃や腸は健康の土台です。土台がしっかりしていなければ、体はしっかり働いてくれません。

胃や腸の不調を自覚しているのであれば、まずはそれを治すことがとてもとても大切です。胃や腸は心の状態の影響ももろに受けるので、食生活に気をつけるだけでなく、よい心の状態をつくることも必要です。

食生活を直しても改善されなくて、薬はあまり使いたくない、という場合はご相談ください。特に胃の不調には、必ずお力になれると思います。









最後になりますが、最近炭水化物をとらない糖質制限ダイエットがやたらと流行っているようです。僕は、あれはきっと体に悪いだろうな~と、思っています。歴史の洗礼も受けていない妙な健康法や食事法にいちいち惑わされるのはいかがなものでしょうか?