2015年6月15日月曜日

体からの「便り」 〜 便秘と腸と体のしくみ























「日本人は腸が長くて、西欧人は腸が短い」と言われることがあります。

そして大抵その話はこう続きます。一般的に言って、草食動物の腸は肉食動物より長い。したがって「日本人は本来菜食に向いていて、西欧人は肉食に向いている」と。



しかし、東大とイギリスのセント・マークス病院の共同研究によると、日本人と西欧人の間で腸の長さに特別な違いは認められなかったそうです。

従って「日本人だから肉食は向かない」という説はどうも嘘のようです。





とは言っても、やっぱり肉ばっかり食べていることは確実に体に悪いのは言うまでもありません。

野菜に多く含まれている食物繊維は、殆ど腸に吸収されずにそのまま便として体から出て行ってしまうために、たんぱく質や脂肪や炭水化物と違って「あまり食べても意味がない」という風に考えられていた時代も過去にはあったそうですが、現在では食物繊維をしっかりとることの大切さが広く認められています。







「便」という字は「便り」と書きますが、「便」はまさに体からの「便り」で、自分の生活や体の状態が良い状態にあるかどうかを教えてくれます。

世間では、「便りがないのはよい便り」なんて言葉もありますが、お通じがないのは全くもってよい便りではありません。

便秘は体に大きな悪影響を与えます。
(どうしてなのかは後で書きます。)


食物繊維は小腸や大腸で殆ど吸収されないかわりに、便を排出しやすくしてくれます。最近はやりのスムージーが体に良いと言われるのも、便秘の人は野菜を多めに食べるようにと言われるのも、このためです。









折角なのでこの機会に、知っているようで意外とちゃんとは知らない、私たちの体の根幹、消化器系の仕組みがどんな風になっているのか見ていきましょう。





私たちの口から肛門までは一本の長い長い「管」になっていて、体の「内側」にあるけれども、外部のものと接するという意味では「外側」でもあります。(土管をイメージすると分かりやすいかもしれません。)

そこでこの「管」には、外敵に対する防御の仕組みが色々備わっています。




まず、口に入ったものは食道を通って胃に入り、ここにしばらく留まります。

あまり意識することはありませんが、私たちが口にする食物には、目に見えない小さな小さな虫や、寄生虫や菌やウイルスなどがついています。何かを食べればどうしてもそういうものも一緒に体の中に入ってきてしまうのですが、胃にいる間に、強酸性の胃液によって、その9割方が死ぬと言われています。





胃で滅菌された食べ物は、その後腸に送られますが、それでもまだやっぱり体に有害な菌やウィルスや虫がいた場合どうなるのでしょうか?

「免疫」という言葉はもうすっかり一般的になって、誰もが普通に使うようになりましたが、実は私たちの免疫組織の7割は腸にあり、そういう有害な菌やウィルスが体内に入らないよう、ここでやっつけてくれます。





それでも死なない強力な菌やしぶといウィルスなどは、体に吸収されてしまう前に腸がそれを察知して排出しようとします。O-157などの大腸菌や赤痢に感染すると下痢が止まらなくなるのはそのためです。これは体が異物を外に排出しようとしておこしているので、こういう時の下痢を止めることは非常に危険です。



(ちなみにH2ブロッカーなどの胃薬は胃酸を押さえる働きがあります。胃薬を飲むと胃の気持ち悪さや痛みは止まるかもしれませんが、殺菌が不十分なままの食べ物を腸に送り込んでいるということになりますので、短期的に使うことは場合によっては必要かもしれませんが、それを長期的に使用することは、体にとって最善の選択ではないかもしれません。)







そんな風に、食べ物は食道を通り胃に入った後、小腸で消化・吸収され、大腸へとたどり着きます。

この大腸では、まだ残っている栄養素も吸収されますが、主に水分の吸収が行われ、この大腸に長い間あればあるほど、食べかすから水分がどんどん吸収されてゆきます。便秘になると便が硬くなるのはそのためで、ひどくなるとウサギのふんのようにコロコロとした便になります。





では便秘になると何がよくないのでしょうか?

ちょっと想像してみましょう。
夏の暑い日に食べ物をそのまま放置しておくとどうなるでしょう?

保存料がガンガンに入っているコンビニやスーパーの出来合い品でもない限り、食べ物は傷んで、変な味になり、変な臭いを発する様になりますよね?




腸の中は40℃近くあるわけで、その中に食べかすが3日も1週間もあるわけですから、当然その間には腐敗も進んでいるでしょう。

便秘がひどい人になると1週間とか2週間とか腸の中に食べかすがあるわけですから、その腐敗した食べかすからでる毒素や有害な物質も、大腸から吸収されて血液にのって体を巡ることになります。





ちょっと細かい話になりますが、小腸や大腸で吸収された栄養分や水分は、血管(門脈)に吸収されてまず肝臓へと運ばれ、その後全身を巡る血液の流れに入ってゆきます。

従って、腸から吸収された毒素や有害な物質も、まずは肝臓に向かいます。それは当然肝臓に負担をかけることになりますし、また肝臓で解毒しきれなかった毒素はそのまま体を巡ることになり、方々に様々な悪影響を引き起こします。


腸の状態が悪いと肌があれたりするのも、そういうつながりで考えてみると不思議なことではないのではないでしょうか?







ということで、野菜をしっかり食べることは大切です。

ちなみに食物繊維には、水溶性と不水溶性の2種類があって、水溶性食物繊維は水に溶けてゼリー状になって便をやわらかくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やして、それぞれ異なった働きで便を排出しやすくします。

特に便秘がちな方は、もしまだ意識したことがなかったら、その2つの違いを意識してバランスよく食べるようにするとよいでしょう。詳しくはネットで調べると色々出てくるので見てみて下さい。

(
アボカドとか水で洗っちゃだめそうなものは水溶性繊維が多く、レタスのように水で洗って大丈夫そうなものは不溶性繊維が多いです。)





より深刻な便秘で困っている方の中には、下剤を使っている方も多いと思います。しかし、下剤を常用すると自力で便を出す力が弱まるだけでなく、腸内にメラノーシスと呼ばれるシミができて腸の働きが悪化するので、より多くの下剤を飲まなければならなくなるという悪循環に陥るようです。(ちなみにそれは大黄・センナなどの漢方薬でも同じ。)

それだけ困っている人が多いからか、便秘や腸の不調に関する本は何十冊とありますが、今まで読んだ中ではこの本が一番役に立ちそうだったので、ひどい便秘で本気で悩んでいる方はこの本を読んでみることをオススメします。


『快腸!絶好腸!快便力』松生恒夫







こんな風に、「腸」は体全体の健康にとって、とても重要な役割を果たしています。胃や腸は健康の土台です。土台がしっかりしていなければ、体はしっかり働いてくれません。

胃や腸の不調を自覚しているのであれば、まずはそれを治すことがとてもとても大切です。胃や腸は心の状態の影響ももろに受けるので、食生活に気をつけるだけでなく、よい心の状態をつくることも必要です。

食生活を直しても改善されなくて、薬はあまり使いたくない、という場合はご相談ください。特に胃の不調には、必ずお力になれると思います。









最後になりますが、最近炭水化物をとらない糖質制限ダイエットがやたらと流行っているようです。僕は、あれはきっと体に悪いだろうな~と、思っています。歴史の洗礼も受けていない妙な健康法や食事法にいちいち惑わされるのはいかがなものでしょうか?







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